オンラインセミナーレポート|現場のAI分析で店舗効率が改善した小売業のストーリーとは?

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企業におけるDXの取り組みが加速する一方、現場においてはその実現を妨げるさまざまな課題が生じています。

 こうした状況の中、
「トップダウンでDX推進の指示を受けたが、何から手をつけたらいいのか?」
「収集したデータを、具体的にどのように業務改善に活用するべきかわからない
といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

 本記事では、株式会社Ideinが主催したオンラインセミナー「現場DXの進め方が分かる!  リアル店舗の業務効率改善事例」の様子をレポート。
現場におけるDX推進の事例とポイントについて解説していきます。

 )本文中の数値等は、20219月現在の情報です。

はじめに

【登壇者】
Idein株式会社 代表取締役/CEO
中村 晃一

当社は、「ソフトウェア化された世界を作る」というビジョンのもと、2015年に創業したスタートアップ企業です。手軽かつ安価にAI解析を利用したIoTシステムを構築できるプラットフォームサービスとして「Actcast」を展開するほか、同技術を活用したプロダクトとして、クラウド防犯カメラ「ミルシル」をリリースしています。

このうち「Actcast」は、幅広い用途に活用できることが特長です。リリース当初は小売業界への導入が中心でしたが、製造業をはじめ交通インフラ、さらに獣害対策といった場面でも活用が進み、既に130社近くのパートナー企業の皆様にご参画いただいているプラットフォームとして成長しています。

こうした中、当社が注力しているプロジェクト事例のひとつに「サイネージと広告の組み合わせ」があります。具体的には、店舗においてレジの後ろにオンライン連動型デジタルサイネージを設置し、Ideinが提供するAIカメラで「顧客属性と視認状況」を分析し、広告形態最適化と効果測定を実施しています。

現在進めている第1フェーズでは、解析データを広告形態の最適化や効果測定に役立てる取り組みを実施しているところです。さらに、その先の第2・第3フェーズでは、デジタルサイネージを起点にリアル店舗のデータとターゲティング広告のデータを徹底的に連動させ、その仕組みを全国の店舗に横展開することで圧倒的な精度とリーチの実現を目指しています。

こうした取り組みを進める一方、当社では「これからDXを実現したい」と検討されている企業の担当者様から「データを収集することで何が得られるのか」「収集したデータをどのように活用すれば良いのか」といったようなご相談を受けることがあります。

そこでここからは、現場のDXに関してさまざまな事例を有するKDDI株式会社の吉兼様より、実際の取り組みとその効果をご紹介いただきます。

KDDIにおける現場DXの取り組み

【登壇者】
KDDI株式会社
ソリューション事業本部 サービス企画開発本部
5GIoTサービス企画部 パートナービジネスグループ
グループリーダー
吉兼 佐葵子

当社はこれまで、約20年間に渡って通信の分野でIoTプラットフォーマーとしてお客様をサポートしてきました。2001年にセキュリティ端末を提供開始し、テレマティクスやホームセキュリティを経て、スマートメーターやコネクティッドカーなどのご利用も広がり、2021年現在、2,000万回線を超えるIoT回線数を法人契約いただいています。

市場が拡大する中で現場においては、DX実現のために大きく2つのIoTニーズが生じています。

このうち、1つは、「M2MMachine-to-Machine)からIoTへ」ということで、センサーと通信を活用して現場の状況を可視化(モニタリング)したいというニーズです。そしてもう1つは、「IoT × AI」ということで、AIを活用して現場業務をよりスマート化していきたいというニーズです。

ここからは、それぞれ当社における具体的な事例について解説していきます。

 

KDDIの現場DX事例:現場モニタリングの活用

まず、現場モニタリングへのIoT活用として、ある鉄道会社様の事例をご紹介します。 
鉄道にまつわる業務では、事故等を未然に防ぐため、一瞬のミスも許されません。一方でこのお客様の現場では、夜間の線路の保守(点検)作業時、機材の置き忘れが生じるケースがあり、課題となっていました。機材を1つでも線路付近に置き忘れてしまうと、翌朝のダイヤに影響が出るおそれがあります。

そこでこちらの現場では、SIM内蔵型の小型の位置情報デバイスを機材に装着して位置情報を取得できるようにしました。さらに、現場のユーザー様が機材の位置情報を簡単に把握できるよう、直感的なUIのアプリを提供することで、現場の業務品質改善を実現することができました。

このように、業務の一部を見える化することで現場の課題が解決するというケースは珍しくありません。例えば、ある排水処理会社様では、現場の発注業務において熟練者が目視で部品在庫を把握し、発注のタイミングを見極めるという匠の技が行われていました。

一方で、こうした属人的な状況では、熟練者不在時の対応に課題が生じてしまいがちです。そこで当社では、重量を計測可能なマットセンサーとモバイルルータを組み合わせ、重量により部品在庫を見える化した上で、設定した閾値に達した際に自動で部品が発注されるシステムを構築しました。結果として、発注業務の自動化を実現しつつ、現場の属人化を解消することに成功しています。

KDDIの現場DX事例:現場業務のスマート化

IoT × AI」の取り組み事例として、はじめにスマート工場における故障予知の事例を紹介します。

段ボールなどの紙のパッケージの製造加工を行う日本トーカンパッケージ様では、全長100メートルもの段ボール製造装置が常時稼働しています。この製造装置は止めることが許されない機械と言われており、停止することが大きな損失に直結するという状況でした。

そこで当社では、この装置にIoTのセンサーを取り付け、振動や温度、電流など、装置に関わる情報を収集する仕組みを構築。その上で、データをクラウドに上げて稼働状況をモニタリングしつつ、そのデータをAIに解析させることで、装置の故障予知を実現しました。

続いて、AIを活用する上で見逃せない画像解析について、Idein社と協業したサービスを紹介します。当社では、20216月に「KDDI  IoTクラウド Standard エッジAIカメラパッケージ」というサービスを新たにリリースしました。

このサービスを活用することで、人が目で見て判断していた業務を自動化し、定量データとしてクラウドに収集できるようになります。従来のエッジAIカメラと比較して安価に導入可能で、モバイル回線からクラウド、現地設置までワンパッケージでご提供できる店も、同サービスの特徴です。

このサービスをはじめ、Idein様とはさまざまな分野で協業を進めています。例えば、次のような事例を挙げることができます。

【製造・小売業の事例】
・生産設備におけるアナログメーターの目視点検業務を自動化
・広告前の人通りを収集し、サイネージ広告の効果を測定

【公共施設等の事例】
・シェアラウンジ利用者の属性データを収集し、サービスを最適化
・ワクチン接種会場における人流異常をモニタリング

【サテライトオフィスの事例】
・エッジAIカメラを活用し、各オフィスの稼働状況を個人情報に配慮しつつ可視化

このように当社では、「IoT × AI」を掛け合わせることで、さまざまな現場のDXを支援しています。一方で現場においては、DX実現にあたって技術以外の部分で課題が生じることも少なくありません。具体的には、「機器設置」「回線」「不具合発生時の対応」といった部分でお悩みの声を聞くことが多いです。

こうした課題は、IoTAIが今以上に発展したとしても、技術そのものによる解決は難しいと考えられます。そのため、DX実現のために新しい技術を導入・運用する際には、ベンダーのサポート体制についても確認しておくことが重要です。

 当社においてもオプションを含め、充実のサポート体制をご提供しておりますので、DXについてご検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

KDDI吉兼様 × Idein中村 ディスカッション

中村:多岐にわたる取り組みに関するお話をありがとうございます。事例の中でも、データの利活用についての話がありました。改めて「データの利活用により、何が実現できるのか」という点について、改めてまとめていただけますでしょうか。

吉兼様:事例でもご紹介させていただいた通り、リアルなデータを収集して見える化することで、業務を半自動化したり、リモート化したりすることが可能になります。効果としては、業務効率化やコスト削減のほか、業務を均一かつ高品質に保てるという点も、企業に与えるインパクトは大きいと考えています。

中村:それらを実現するにあたり、成功のポイントがあればお聞かせください。

吉兼様:目的を明確化することが重要です。IoTひとつとっても、課題を解決するためにどのセンサー・カメラを入れれば良いのかなど、さまざまなアプローチがあります。そのため、まず目的を明確にした上で、それに対してベストな方法を選択していくという流れがポイントだと思っています。

中村:現場においては、目的はもちろん課題が明確化されていないようなケースも見受けられます。 

吉兼様:そうした場合には、現場を確認した上で、どのようなことに悩んでいるのか、ヒアリングするところから始めていきます。当社には、DXの推進部隊といった立ち位置の部門もあるので、コンサルティング寄りにお客様のお話を伺いながらご提案していくという流れですね。

中村:ありがとうございます。もう一点、AI技術が日々どんどん進化する中、「どの業務までを人が担当し、どこから機械に任せるのか」といった切り分けが重要になってくると考えています。この点についてご意見などありますでしょうか。 

吉兼様:私自身、先ほど「業務の半自動化」という表現を使ったように、現状の技術では、業務を全て機械任せにすることは難しいです。従来、常に人が張り付いていなければならなかった業務について、機械が半分代行してくれるようなイメージですね。オペレーションのところは、細やかなフォローなども必要ですので、人に依存してくると思います。

中村:ありがとうございました。

 

小売業界の店舗におけるDX実現に向けた課題

【登壇者】
Idein株式会社 代表取締役/CEO
中村 晃一

ここまで、KDDI株式会社の事例をもとに、さまざまな分野におけるDXの取り組みをご紹介してきました。ここから、特に小売業における店舗のDX事例について深掘りしていきたいと思います。

当社が「Actcast」事業を通じて、大手リテール事業者様とDXへの取り組みに携わる中で、店舗においてはDX実現のための典型的な課題があることに気づきました。具体的には「人材不足」「運用コストの負担」「導入リードタイムの長期化」の3つを挙げることができます。

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AI技術は日進月歩で進化している一方、必ずしも「使いやすい」技術ではありません。例えば画像解析に活用する場合、光の状況や設置角度、画角など、現場の状況を十分に考慮する必要があります。他にも、回線やシステム、データ処理などの問題をクリアする必要があります。

そのためには、高度なエンジニアリング能力を持つ人材が欠かせません。しかし、そうした人材はどの業界においても不足しているという現状があります。そこで最近では、運用をアウトソーシングする形でAI技術を導入する企業も増えています。ただ、そうすると今度は運用コストが肥大化してしまうのです。

また、AI技術は新しい領域であるため、実際の運用における成功事例もまだ多くありません。そのため、現場における問題の明確化に時間がかかり、本来の目的であるDXの実現に至らないというケースも少なくありません。

こうした課題を解消するため、当社では低コストかつ手間のかからない運用が可能なクラウド防犯カメラ「ミルシル」を提供しています。ここからは、店舗のDXについて数々の知見を持つ株式会社クレストの阪本様に、実際に小売業界で当社のプロダクトを活用した事例を紹介していただきます。

現場のAI分析で業務効率が改善した小売業界のストーリー

【登壇者】
株式会社クレスト
取締役 マーケティング部長 兼 リテールテックチーム責任者
阪本 治彦

当社は、リアル店舗のサイン&ディスプレイを祖業として、1986年に設立された企業です。現在は、小売業を行うグループ会社で蓄積したノウハウを基に、店舗のDXを目指す企業様にIoTデバイスを提供する事業を展開しています。

今回は、その一例として複合商業施設・キラリナ吉祥寺様における事例を詳しく解説していきます。

クレストの店舗DX事例:キラリナ吉祥寺様

20216月、キラリナ吉祥寺様に「INSEL STORE」というショールーミングストアがオープンしました。このストアでは、テナントである各D2Cブランド様に商品棚を1個ずつ貸し出すサービスを行っています。

店内にはIdein社の「Actcast」などが導入されており、実際に人流の計測や属性の検知を行った上で、収集したデータをもとに商品棚のレイアウトを変更しつつ、入店率の変化などを探る取り組みを実施しています。

特に人物属性に関しては、各ブランドが「男性と女性、どちらに注目されているのか」「どのような年代からチェックされているのか」といったデータも収集しており、今後のマーケティング施策にも活用が期待されます。こうした分析は従来、属人的になりがちだったので、客観的なが収集できる点はAI技術の大きなメリットと言えるでしょう。

INSEL STORE」のほかにも、キラリナ吉祥寺様ではIdein社のプロダクトが活用されています。具体的には、出入り口やエスカレーター付近などの来店者の動線上に、ディスプレイやデジタルサイネージと並ぶ形でクラウド防犯カメラ「ミルシル」が設置されています。

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ここでは属性の検知などを行っているほか、先進的な取り組みとして「ディスプレイが何秒くらい見られているのか」といったデータを収集しています。ディスプレイを変更した際の来店客からの注目度や滞留状況の変化などを分析することで、より効果的なディスプレイについて検討することができるようになります。もちろん、デジタルサイネージにおいても考え方は同様です。

店舗のDX実現のために 

AI技術とデジタルサイネージについては、「目の前にいるお客様の属性に合ったコンテンツを、リアルタイムに表示させたい」といったお問い合わせをいただくケースがあります。ただ、その効果については疑問が残ります。

デジタルサイネージに表示されたコンテンツを、立ち止まって見るというお客様は、実は非常に少ないのです。ごく限られた方に向けてリアルタイム性を担保した広告を出したとしても、効果は薄いと考えられます。

それであれば、「この時間帯は20代の女性が多い」というような過去データの分析をもとに、その属性に向けたコンテンツを表示させていく方がより広告効果は高いでしょう。

このように、店舗のDXについては「実際に始めてみないとわからない」部分が多くあります。最近では、DX推進の取り組みの中でAI技術を導入したものの、短期的なデータ収集に留まり、効果的なマーケティング施策につなげられていない企業も少なくありません。一方で、データは収集する期間が長いほど価値が高まり、効果的な施策につながっていきます。 

その点で、これから店舗のDX実現を推進しようと検討している企業においては、スムーズな導入・運用でデータ収集が可能なプロダクトと、収集したデータをマーケティング施策に活用できる知見を持ったパートナーを選定し、速やかに取り組みを進めることが重要だと言えます。

登壇者へのQ&A

数あるAIツールの中から自社に最適なものを選定するポイントについてお聞かせください

吉兼様:使用する環境や背景にもよりますが、まずは「本当に見える化したいものが見えるのか」試してみるのが良いと思います。最近では低価格なツールもあるので、そうした製品を選定することで、気軽に試せるのではないでしょうか。併せて、遠隔でもアップデートできるようなツールもおすすめです。

阪本様:やはり、一日でも早く現場DXの取り組みを進めていただくためには、低価格なツールを選定することをおすすめします。とはいえ、先程、吉兼様もおっしゃっていたように、目的を明確化することも重要です。その目的に応じてより正確性の高いものを選定するのか、あるいは汎用性が高く気軽に活用できるものを選定するのか、検討していくと良いと思います。

経営者と現場、それぞれの立場におけるデータ収集のメリットとは?

中村:例えば複数の店舗を有する企業の場合、データを活用した経営改善というのは、本社チームの担当プロジェクトだと思います。このプロジェクトが成功すれば、経営者はデータドリブンな判断が可能になるでしょう。 

ただ実際には、現場にカメラを設置してデータを収集するといった取り組みを実施する際には、現場からの理解が欠かせません。そして現場からの理解を得るためには、データを活用することで現場にもベネフィットがあることを伝えることが必要です。 

具体的には、データの利活用により業務効率化が進むことで、人にしかできない高付加価値な業務に注力できるようになるといったベネフィットを、現場のスタッフにも積極的に打ち出していくことが重要だと考えています。

DXに課題を感じている方は、ぜひ一度お問い合わせください。

ここまでご紹介したように、Idein株式会社では「Actcast」や「ミルシル」といったプロダクトをベースとして、小売業界をはじめ、さまざまな企業がDXを実現するためのサポートをしています。

このセミナーレポートをお読みいただき、事例の内容やプロダクトにご興味をお持ちいただいた方は、お気軽にお問い合わせください。
※ミルシルのご注文は50台以上より承ります。

今回は、「オンラインセミナーレポート」についてご案内いたしました。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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